【徘徊・暴走】認知症患者の事故を防ぐために家族ができること

高齢化社会により、年々増えている認知症患者とその事故。あなたの家族は大丈夫ですか。「大切なお父さんやお母さん、お爺ちゃんお婆ちゃんが家を出たまま帰らない」「車に乗って出かけてしまった」なんてことはありませんか。今はまだ大丈夫でも、今後何かあるかもしれない。認知症患者と同居している世代は、そういった不安に悩まされているものです。

今回の特集記事では、認知症患者の徘徊防止対策と、もしものときの対処方法をご紹介。この記事を読んで対策を行い、不安を払拭できればと思います。

まずは知ってほしい認知症患者による事故

認知症患者による事故で思い浮かべるのが、徘徊や車による暴走、線路侵入などがあると思います。テレビのニュースやワイドショーでもよく取り上げられているため、近くに認知症患者のいない人でも知っている内容です。主に認知症患者が家族の知らない間に外出して、そこで事故に遭う・起こしてしまうというもの。ですが、それだけではありません。認知症患者の事故は、家の中でも起こります。まずは家の外で起こる事故と中で起こる事故を認識し、各々の対策を練ることが大切です。

①家の中で起こる事故

家の中で起こる認知症患者の事故とその場所の図
家の中で起こる認知症患者の事故とその場所の図

家の中で起こる事故を大きく分けると「①徘徊」「②転倒」「③異食」「④火傷」です。
①徘徊は、家の中を歩き回ること。
②転倒は、何もないところをはじめ、段差や階段、ベッドから落ちてしまうことです。
③異食は、食べ物ではない洗剤や固形物を飲み込んでしまうこと。
④火傷は、沸かしすぎたお湯やお風呂に触れてしまうこと、ガスコンロや鍋を触るなどです。
転倒、異食、火傷は、大怪我に繋がるほか、大事に至ると死亡事故にもなってしまうので注意と対策が必要です。

②家の外で起こる事故

家の外で起こる認知症患者の事故とその場所の図
家の外で起こる認知症患者の事故とその場所の図

家の外では主に「①徘徊」「②転倒」「③暴走」でしょう。
①徘徊が最も多く、家を出たまま行方不明になるというのが有名。ですがそのほかにも、「線路に侵入してしまう」「道路に出て車に引かれてしまう」というのも、徘徊が引き起こした事故になります。
②転倒は家の中と同じく、外で転んでしまったり、階段や段差から落ちてしまうというもの。
③最後の暴走がとても厄介です。特に思い浮かばれるのが、車の運転。逆走したり歩道を走ったり、人の列に突っ込んでしまうというもの。またそれだけではなく、近隣住民や通行人に暴言を吐く、殴りかかるなどのトラブルもあります。
家の外での事故は家の中とは違い、他人に迷惑を掛けることが圧倒的に多くなります。認知症患者による事故で、他人に怪我をさせる・死亡させてしまうケースも年々増えています。

認知症患者の起こした事故の責任は、残念ながら監督している家族が負う場合がほとんど。認知症患者と同居している家族は、事故を起こさせないためにも対策が必要です。

認知症患者による事故を防ぐ対策

認知症患者による事故は、今や社会問題にもなっています。現在の医療では認知症の症状を遅らせることはできても、認知症自体を完治させる方法はありません。認知症患者を持つ家族は、事故を未然に防ぐ対策をするとともに、患者とうまく付き合っていくことが大切です。

①徘徊防止錠の設置

認知症患者の徘徊防止に最も有効なのが、徘徊防止錠を取り付けることです。内側から鍵を開けられないようにするもので、玄関や室内扉、窓に取り付けます。徘徊防止錠には複数種類があり、内側・外側両方とも鍵を使って開けるものや、内側にテンキーがついているものなのです。家族の利便性等を考慮して、適切な場所に適切な鍵を取り付けると良いでしょう。また徘徊防止鍵は、空き巣などの犯罪に防ぐにも有効です。

商品名 効果
セーフティサムターン
セーフティサムターン

内側のつまみ(サムターン)を鍵にしたもの。鍵を掛ければ内側からは扉を開けることはできません。家族が外出しているときはもちろん、家の中にいるときも鍵を掛ければ安心です。家族が家にいるときは、鍵を認知症患者に渡さないようにしてください。

安心錠
安心錠

こちらは内側のつまみ(サムターン)が取外し可能なものです。サムターンを取り外すと、内側から扉を開けるには鍵が必要になります。セイフティサムターンとは違い、必要に応じてサムターンを取り付けられるので便利です。

ファスナーロック
ファスナーロック

ファスナーロックは窓に取り付ける鍵です。掃き出し窓や腰高窓に設置することで、窓から外へ出ることを防ぎます。また2階や3階の窓からの転落事故も防ぎます。

徘徊防止錠はほかにも種類は様々あります。値段も安いものから高価なものがあるので、予算と環境に合ったものを選ぶとよいでしょう。鍵の交換や取り付けについては、弊社で対応しています。お電話(0120-961-976)またはメールにてお問合せいただければ、適切な鍵をお取り付けいたします。

徘徊防止鍵を取り付ける主な場所
徘徊防止鍵を取り付ける主な場所

②車(バイク・自転車)や車の鍵の管理

認知症患者が車やバイク・自転車に乗りたがる場合は、これらに乗らせないようにしなければいけません。鍵は渡さない、隠してしまうなどが必要です。車やバイクであれば、バッテリーを上げて物理的に乗らせないという方法もあります。

認知症だけど軽度だから大丈夫。そう思うのは大変危険です。下記のチェックリストを見て、一つでも当てはまるものがあったら車の使用をやめさせてください。

運転をやめさせたほうがいい行動一覧
運転をやめさせたほうがいい行動一覧

③見守りカメラ(サービス)の活用

見守りカメラとは、家の中に設置する監視カメラです。映像をスマートフォンなどの端末で確認できるほか、通話をすることも可能です。認知症患者とは別の部屋にいる場合や、外出先でも認知症患者の行動を知ることができます。また通話をすることで、認知症患者が外出しようとしたときに呼び止めることもできます。万が一出て行ってしまったときには、そのときの服装が分かるので早期発見にも役立ちます。

この見守りカメラにも種類があるため、適切なものを選ぶ必要があります。子供やペットを見守るために作られたもののほか、認知症患者の見守りに特化したものまで様々。中には「みまもりCUBE」のように、介護保険が適用される見守りカメラもあります。

④見守りシールの活用

各自治体では、認知症患者の徘徊・行方不明になったときの対策として、「みまもりシール」を配布している場合があります。このみまもりシールとは、認知症患者の名前や住所などの個人情報が記録されたQRコードが搭載されたシールです。認知症患者の衣服や靴、杖など普段身に着けているものに貼り付けて使用します。
徘徊している認知症患者を周囲の人が発見したとき、このQRコードを読み取ることでどこの誰かがわかります。またQRコードを読み取ると、自動で自治体の掲示板に情報が記載される仕組みです。認知症患者のいる家族はこの掲示板を見ることで、いなくなってしまった患者が今どこにいるのかがわかります。

徘徊自体を防ぐものではありませんが、徘徊して行方が分からなくなってしまったときには大変有効です。

⑤介護サービスの活用

認知症患者の事故防止には、なんといっても介護サービスの活用が効果的です。デイサービスやホームヘルパー、ショートステイなどが代表的です。家族の代わりに認知症患者を見守ってくれる人がいれば安心です。サービスを利用している間、家族も心を休めることができます。

認知症患者がいなくなってしまったときにすること

認知症患者がいなくなってしまったら、家族はなにをすればいいのか。突然のことだと気が動転してしまい、すぐに探しに行かないとと家を飛び出してしまうかもしれません。もちろんいち早く探しに行くことも大切ですが、その前にやるべきことがあります。

①警察に捜索届を提出する

まず最初にすべきことは、警察に連絡することです。これは認知症患者の徘徊・失踪は「ただちに命に係わる危険があるため、早急に捜査活動をしなければならない」と、警察でも認識されているからです。警察に捜索届を出すと、すぐに捜査員が動員されます。家族だけで探すよりも大人数で、より確実に認知症患者を探すことができます。

捜索届の出し方と流れ

②市区町村に連絡を行う

警察への届け出が終わったら、住んでいる市区町村の役所や支援センターへの連絡も行ってください。各市区町村には、「認知症の人の見守り、SOSネットワーク」というものがあります。これは行政と警察、市民が連携して、認知症患者などの行方不明者を捜索するためのサービスです。登録するとネットワークで情報が共有され、捜索はもちろん保護されるであろう「警察」「病院」「保健所」などにも情報が流れます。保護されてもどこの誰かがわからず、家族のもとへ帰れない。そういった不幸を限りなくなくせるほか、見つかった場合は家族に連絡が入るので、速やかに家族のもとへ帰せるサービスです。

また厚生労働省では、「身元不明の認知症高齢者等に関する特設サイト」を提供しています。こちらでは身元不明の保護者の情報を公開しているので、長く探しているけど見つからないといった方はチェックしてみてください。

認知症の人の見守り、SOSネットワークの主な流れ

③家族で捜索する

警察、市区町村への連絡を済ませたら、家族で捜索してください。
認知症患者の徘徊は、家族には意味のないものに思えます。ですが、患者本人は理由や目的をもって、家を出ています。その理由・目的とは「①外出願望」「②帰宅願望」「③逃避願望」「④強迫観念」「⑤病前の生活習慣」などです。例えると以下のようなものです。

①家にいるのが嫌なので、気分転換をしに行きたい
①散歩をしようと家を出たが、家の場所がわからない
②この家は自分の家じゃない気がする、本当の家に帰らないといけない
③この家にいると嫌なことばかり起こる、別の場所へ行きたい
④〇〇へ行かないといけない、〇〇をしなくてはいけない
⑤買い物や仕事に行くために家を出たが、目的地がどこだか忘れた
など。

すべてがこれに当てはまるわけではありませんが、こういった理由・目的が分かれば、捜索する場所を絞ることが可能です。例えば以前の散歩コース周辺や友達・隣人の家。以前はバリバリ働いていたお父さんなら、会社までの道のりなど。認知症患者は目的を持って家を出て、行先や帰り道が分からなくなり、結果徘徊してしまっています。ある程度の予測を立てて、心当たりのある場所を探すと早期発見に繋がります。広範囲の捜索については、プロである警察に任せてしまうのも手です。大事なのは認知症患者の発見はもちろん、家族が疲弊しないこと。無理をしないように、公共機関や周りの手も恥ずかしがらずに借りてください。

認知症患者の徘徊で発見される場所と発見までの期間

家族ができる徘徊予防策

最後に、家族ができる徘徊予防策をご紹介します。鍵を交換したり車の鍵を取り上げることで、物理的に徘徊・暴走させないことはできます。ですがそれは、認知症患者にストレスを与え、症状が悪化したり、暴言や暴力を増やしてしまう原因に繋がります。まずは認知症患者をよく理解して、適切に対応してあげましょう。そうすることで、認知症患者の徘徊衝動を少なくさせることができます。

①認知症患者を怒らない

認知症患者がなにをしても怒らない。これが一番難しく、そして効果的な方法です。
認知症患者は様々な失敗をし、その都度周囲にいる家族にストレスを与えてしまいます。数回の失敗ならまだしも、毎日、何度も繰り替えされると、家族はつい怒ってしまうものです。

認知症患者は怒られた内容は忘れても、怒られたこと自体は覚えているものです。あのとき怒られた、怖い思いをしたという感情だけが残り、「この家を出たい」「この家にいると良くない」そういった考えを持ってしまいます。これが徘徊に繋がるのです。

大事なのは怒らないこと。ですがこれが非常に難しく、家族のほうがストレスをためてしまいます。なので認知症患者を持つ家族は、認知症患者を親や祖父母とは思わずに、赤ちゃんだと思うように心がけるとよいでしょう。ある意味患者の言動については諦めて、「赤ちゃんだからしょうがない」「できないのは当たり前」そう思うように努めてください。堪えて我慢するよりも、開き直ることが大切です。認知症患者を「介護」していると思うよりも、子供を「育てている」。そう思えば、「失敗よりもできること」に目が向いて、怒らず・ストレスもためにくく、上手に付き合うことができます。

②気を逸らせる

認知症患者が家を出ていこうとしている。というように、徘徊しそうなときには、声をかけて別のことに興味を持たせてください。そうすると家を出ていこうとしたことを忘れ、留まってくれるようになります。例えば以下のような内容を言ってみてください。

・どこいくの?
・出かける前にトイレに行こう
・財布は持った?
・水分はちゃんと取らないとだめだよ

などです。当たり障りのないことを言えば、機嫌を損ねることもありません。大事なのは、ここでも怒らないこと。話しかけるときは怒らず、機嫌を悪そうにもせず、普段通りの対応をしてあげてください。

③適度に外出・運動をさせる

認知症患者は、じっとしていられないものです。じっとしていると動きたくなるのは、普通の人も同じこと。なので適度に外出させ、体を動かすようにしてください。気持ちを満足させるとともに、適度に疲れさせると徘徊もしにくくなります。特に日中に運動をするとよいでしょう。体を動かすと夜は眠くなるので、深夜の徘徊を防ぐことに繋がります。

もちろん運動のし過ぎは体に良くありません。個人や体調にもよりますが、散歩やラジオ体操程度にしてあげてください。

④デイサービスを利用する

徘徊防止に介護サービスを利用すると先述ご紹介しましたが、デイサービスは予防にも繋がります。介護のプロが運動やレクリエーションを行ってくれるほか、同じ年代・境遇の人たちと触れ合うのは脳に刺激や満足感を与えます。また家族も認知症患者と離れる時間を作れば、心に余裕が生まれストレスを抑えることができます。

認知症患者と上手に暮らしていくために

認知症患者と上手に暮らしていくためには、事故を起こさせないための対策が必要です。鍵を取り付ける、見守りカメラを設置する、介護サービスを利用するなどして、徘徊や転倒、暴走などの事故を防ぎましょう。そうすることによって、介護者の「いつか事故を起こすかも」という不安を軽減させることにも繋がります。介護者の不安が少しでもなくなれば、日々のストレスが減り認知症患者への接し方も変わってくるはずです。